◎社会の枠組み揺さぶる女たちの挑戦
朝倉かすみ著『けんぐゎい』(光文社)
舞台は江戸期。主人公は六つの時に重い疱瘡にかかり、痘痕(あばた)だらけの顔と体になってしまったふゆ。そのせいでいじめられたり気の毒がられたりして育ち、だからこそ、目立たないようにして生きてきた。しかし10歳で手習い所に通い始めると、師匠の重右衛門はふゆの中に「尋常ならざるもの」が棲んでいると感じ取る。
やがて重右衛門の手伝いをするようになるふゆは、重右衛門が跡取りにするために養子にした宗三郎に思いを寄せるが、彼は歪んだ性癖を持つ男だった。宗三郎はふゆを凌辱して言う。「おまえは圏外。(略)一生、外側にいるしかないんだ」
ふゆは宗三郎の子どもを妊娠し、今でいう産婦人科医のおこまさまと出会う。「現人神」と崇められている彼女の技術を10年かけて修得し「圏外の女たち」が集う「夢の国」をつくる――。
おこまさまからふゆに伝授された最も大事な精神は「いかなる理由や働きかけや脅しがあろうと、女は産まされてはならぬし、産めないことがあってはならぬ」ということ。つまり「性と生殖に関する健康と権利」のことであり、「私の体は私のもの」という理念である。
社会の枠組みを揺さぶる女たちの挑戦が小気味よく、爽快に映る。そして、自分を肯定することの大切さが伝わってくる。2026年4月に出版された著者初の時代小説。(文)
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