わたしたちは、まだ、旅の途中。

このプラットフォームをつくると決めたとき、わたしたちは最初の記事を何にするか、ずいぶん話し合いました。
性暴力に関するニュースでしょうか。
被害当事者の手記でしょうか。
あるいは、この場所が目指す社会像についての宣言でしょうか。
そのどれよりも先に、書くべきものがあるのではないかと考えました。
それが、この場所のグラウンドルールです。
少し意外に思われるかもしれません。
わたしたちにとって、このルールは、ただの「運営上の決まりごと」ではないのです。
どのような社会を目指すのか。
どのような公共性を育てたいのか。
そのために、自分たちはどのような関係を結ぶのか。
その約束そのものを書き留めたものです。
性暴力は、人の境界線を侵害する出来事です。
だから、性暴力について考える場もまた、境界線を大切にする場所でありたいと思いました。
ここは、「もう大丈夫な人」のための場所ではありません。
「すぐに声を上げられる人」だけの場所でもありません。
話したくない日があります。
返事ができない日があります。
ニュースを読むことさえ苦しい時間があります。
それでも、性暴力について考えることをやめたくない。
誰かが考えつづけていることを感じていたい。
そう思う人がときどき立ち寄り、戻ってこられる場所をつくりたい。
それが、このプラットフォームの出発点です。

この場所には、被害当事者だけではなく、家族や友人、ジャーナリスト、研究者など、さまざまな立場の人がいます。
経験も違えば、時間の流れも違います。
仕事のやり方や文化も違います。
痛みの感じ方も違います。
もしかして、昨日の自分自身とも、どこか少し違っているかもしれません。
この場所では、誰か一人が正しさを教えるのではありません。
それぞれが少しずつ違うこと、変わっていくことを、大切にしたいのです。
変わることは、美しい。
けれど、その役割を、被害者だけに背負わせる社会ではあってはならない。
研究者も、ジャーナリストも、被害者のまわりにいる人も。
それぞれが自分の境界線や振る舞いを見つめ直していく。
わたしたちは、そのための対話を育てたいと思っています。
この場所では、急ぐことを美徳にはしません。
「今すぐ」の圧力を、誰かに強制しません。
やせ我慢を称賛しません。
誰かの経験を、自分の成果のためだけに使いません。
話したことだけではなく、話さなかったことにも敬意を払います。
意見が変わることを恥じません。
「ここだけの話」を、ここだけの話として守ります。
そうした小さな約束の積み重ねが、きっと、安心して考えつづけられる公共性をつくると信じています。
いっぽうで、わたしたちは、完成された公共ではありません。
ここは、公共へ向かう途中にある場所です。
だから、このグラウンドルールも完成したものではありません。
対話を重ねながら、必要があれば書きかえていきます。
変わることを恐れないこと。
それもまた、この場所の大切な約束です。
性暴力について考えること。
これは本来、被害を受けた人だけが担うべき仕事ではありません。
社会全体の仕事です。
だから、この場所もまた、被害者だけが支える場所にはしたくありません。
考えることを、一人の仕事にしない。
変わることを、誰か一人の責任にしない。
そのための、小さな公共をここから育てていきます。

もしも、あなたが、いつも元気ではないけれど、それでも考えつづけたいと思っているなら。
どうぞ、ときどきここに、立ち寄ってください。
読むだけの日も
休む日も
また戻ってくる日も
わたしたちは、そのたびに
「おかえりなさい」と言える場所でありたいと願っています。
〈「#性暴力を考えつづける」編集部一同〉
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