◎19歳の時の被害を30年以上たって振り返る
菊池真理子著『同意なんかしていない』(文藝春秋)
性暴力の被害に遭ってすぐに、警察や病院に相談に向かえる人はそれほど多くない。本書はサバイバーである著者が19歳の時に受けた被害の記憶を起点に、他の被害当事者や性教育に携わる人、公認心理師ら9人との対話を通じて「性的な同意・不同意とは何か」に迫るノンフィクションエッセイコミック。著者は取材を進めながら、不同意性交等罪や性暴力の構造、そして何より30年以上前の自分の身に起きたことについて徐々に理解を深めていく。つらい過去に向き合い、自分を肯定していく過程が、優しいタッチの絵と言葉で描かれる。
幼少時から義父に性的虐待を受けてきた女性が「セックスに価値なんかない、大事にするようなものじゃない。自分にそう思いこませて、私たちなんとか生きてきたんじゃないですか」と話し、「私」は深く共感する。そして取材の帰り道、空を眺めながら「私、恥じなくてもいいや」と思うシーンが、とてもいい。
著者はこれまで「酔うと化け物になる父がつらい」や「『神様』のいる家で育ちました」など、自身のトラウマを題材にしたエッセイコミックを出版してきたが、最も触れるのが難しかったのが性暴力被害のことだったという。何より、社会からのスティグマやバッシングが怖かったからだが、それでも描こうと決めたのは、やはり社会が変わってきたことを実感したからだという。
自分と、目の前にいる人を大切にすることが、性暴力のない社会をつくる第一歩であること。著者が読者に対し「ひとりじゃない」と伝えたいと願っていること――。たくさんの大事なメッセージが込められている(文)。
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